火打ち石で、火を作る
特集「江戸の『もったいない』生活術」はいかがでしたでしょうか。江戸の人々が持っていた知恵と工夫に、少しでも興味をもっていただければ、幸いです。
さて、江戸時代でも日々の生活に「水」と「火」は欠かせませんでした。「水」に関しては、特集でもご紹介しましたように、江戸の人々は郊外の湧水からひいた水道(34~35ページ)の恩恵を受けていましたが、「火」は「火打ち石」と「火打ち金(ひうちがね)」で火をおこしていました。承王2年(1653)に完成し、江戸の人々の生活を潤した全長約43kmの玉川上水を取材で訪れた、作家の石川英輔さん(75歳)が、当時の「火」のおこし方を実演してくださいました。
35ページでもご紹介した
「玉川上水放流口」付近に立つ
石川さん
「マッチがなかった江戸時代、火をつけるには、火打ち石という石を鉄に打ち合わせて出る火花で、火ダネを作りました。火打ち石には石英などの固い石を用いましたが、着火するためには石の周囲を割って鋭い角を作る必要がありました。また、火打ち石を打ちつける鉄は火打ち金(ひうちがね)と呼ばれ、木の把手に鋼鉄をはめ込んだ道具を使いました」(石川さん)
鋭い角がある硬い火打ち石(左)と、鋼鉄の火打ち金を打ち合わせる様子を披露する石川さん。打ち合わせたときに出る火花で、火をおこした。
<火のつけかた>
① 火口(ホクチ)の上で、火打ち金に火打ち石を打ちつけで火ダネとなる火花を作る。
② 火口の上に火花が落ちて点火したら、その部分を口で吹いて火ダネとする。
③ 火ダネになった部分に、薄い木の板の端に硫黄を溶かした付木(つけぎ)の先端を押しつけて、炎を作る。
石川さんは、火口にはモグサを使っているという。モグサとは、ヨモギの葉に生えている細かな毛を集めたもので、それをブリキ缶で蒸し焼きにし、真っ黒でふわふわとした火口を作る。
実際にやってみると、石の鋭い部分と火打ち金の角をうまく当てるのに、ちょっとしたコツがいる。そのほかにも、様々な条件をうまく保たないと火はつきにくい。しかし、材料さえ揃えば火をおこすことができるのだから、石油やガス、電気がないと火はおろか生活が成り立たなくなる我々の生活について、今一度、考えてみるよい機会になりました。
参考文献/『大江戸生活体験事情』(講談社文庫)
(サライ編集部・三浦一夫)
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