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「『遠野物語』を旅する」取材こぼれ話

 『遠野物語』発刊100周年に向けて、『サライ』の「みちのく取材班」が総力を挙げて特集した2月号「遠野物語を旅する」はいかがだったでしょうか。
 取材班はまず、日本民俗学の父と称される柳田國男が見た“伝承の里の風景”を求め、山々が赤く色づき始めた頃、民話のふるさと・遠野を訪れました。
 東北新幹線・新花巻駅で釜石線に乗り換え、列車にゴトゴトと揺られながら車窓に目をやると、美しい山々や川、黄金色に光り輝く田圃が次々に広がっていきます。およそ100年前、柳田國男はこの風景を人力車に乗って眺めたのだろうと想像していると、ようやく遠野駅に到着。東京からおよそ4時間の列車の旅でした。ちなみに、釜石線の列車は宮守駅を通過すると間もなく、宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』のモチーフになったアーチ型鉄橋「めがね橋(宮守川橋梁)」を通過します。年に3回、ひと月間ほど美しくライトアップされるというこの橋は、車内からは全景が見えないので、時間に余裕のある方は宮守駅で途中下車してみてはいかがでしょう(ライトアップ期間の問い合わせ先/遠野市産業振興部 観光交流課 岩手県遠野市東舘町8-12 TEL 0198・62・2111)。

                  

 今回、取材班は3チームに分かれて、各班は都合3度、遠野を訪れています。カメラマンのひとり、宮地工さんは、ほぼ半月にわたって遠野に滞在し、『遠野物語』の世界を徹底してすくい上げるべく撮影に臨みました。
 本特集では、遠野の名所・旧跡のみならず、その土地の「食文化」も深く取材しています。取材を進めていくうちにわかったのは、岩手の内陸部に位置する遠野は、野菜や山菜など山や畑の食材だけかと思いきや、三陸海岸の新鮮な海の幸も味わえるということ。特集で紹介している『旬菜 和田』でも、海の幸を使った献立がいくつも膳に並びます。紙面の都合で今回はご紹介できませんでしたが、魚介料理を味わいたければ、居酒屋『魚っこや』(ごっこや)もお薦めです(遠野市中央通り10-7 TEL:0198・60・1558  営業:17時30~23時 日曜定休)。 異色の料理店は、『農家れすとらん 横一』(57ページ参照)でしょう。店主の阿部義知さんは猟師ということもあり、同店では鹿や熊などの珍味が味わえます。阿部さんの話によると、ある日、ひとりの外国人がふらっと店を訪れ、後日、その外国人から美味なる料理のお礼にと、1冊の本が送られてきたとのこと。阿部さんはその本に記された著者名を聞いたことがなく、友人に「この人、知ってるか?」と訪ねたところ、「こりゃ、有名な作家さんだよ」と言われたそうです。じつはこの外国人は、作家でナチュラリストのC・W・ニコルさんだったのです。阿部さんは、ニコルさんがわざわざ新潟の黒姫から足を運んでくれたことに大変驚いたと語ってくれました。

                 

 本特集では、読者の代表として女優で脚本家の近衛はなさんにも、遠野の町を歩いてもらっています。近衛さんは、父上が俳優の目黒裕樹さん、母上が元女優の江夏夕子さん、父方祖父が近衛十四郎さんという俳優の家系に育った方。読書家でもある近衛さんは『遠野物語』をかなり読み込んでいて、遠野にもすでに2回訪れたことがあるとのことでした。
 かつて遠野は東北有数の馬の市が開かれており、馬と娘の悲恋から生まれたオシラサマの伝承をどうにか写真で再現したいと思った取材班は、早速、近衛さんとともに『遠野 馬の里』へ。おとなしい馬を係の方に用意してもらってフィルムに収めたのが、37ページの一枚です。
 趣味が乗馬という近衛さんは、すぐさま乗馬に挑戦。手綱を握るのは本当に久しぶりと言いながらも、颯爽と馬にまたがり、見事な手綱さばきを披露してくれました(写真①)。しかも、カッパ淵では、「石の上から川底に潜むカッパを覗き込むような写真を撮りたい」という取材班の無理な注文にも近衛さんは笑顔で答えてくれて、こんなポーズも取ってくれました(写真②)。近衛さん、本当にありがとうございました。

(編集部・小倉康広)

  osusume100108_02.jpg写真①

 

osusume100108_02.jpg写真②